【映画レビュー】『女王陛下のお気に入り』 誰が孤独な女王のお気に入りになるのか?

作品紹介

第91回アカデミー賞9部門最多10ノミネート

没落貴族のアビゲイル
女王陛下を影で動かす側近のサラ

孤独な女王とその寵愛を奪い合う二人の女を描く宮廷絵巻。これはまさに英国版”大奥”

『女王陛下のお気に入り』映画情報

『女王陛下のお気に入り』(原題:「The Favourite」)

・監督:ヨルゴス・ランティモス
・脚本:デボラ・デイビス/トニー・マクナマラ

予告動画

あらすじ

18世紀初頭、フランスとの戦争状態にあるイングランド。人々は、アヒルレースとパイナップル食に熱中していた。 虚弱な女王、アン(オリヴィア・コールマン)が王位にあり、彼女の幼馴染、レディ・サラ(レイチェル・ワイズ)が病身で気まぐれな女王の世話をし、絶大な権力を振るっていた。 そんな中、新しい召使いアビゲイル(エマ・ストーン)が参内し、その魅力がレディ・サラを引きつける。レディ・サラはアビゲイルを支配下に置くが、一方でアビゲイルは再び貴族の地位に返り咲く機会を伺っていた。 戦争の継続をめぐる政治的駆け引きが長びく中、アビゲイルは女王の近臣としてサラに救いの手を差し伸べる。急速に育まれるサラとの友情がアビゲイルにチャンスをもたらすが、その行く手には数々の試練が待ち受けていた。

『女王陛下のお気に入り』感想

『女王陛下のお気に入り』は没落貴族のアビゲイル VS 女王に信頼されている貴族のサラという構図で描かれていきます。アン女王に認められて自らの地位を取り戻そうとするアビゲイル。アン女王からの信頼を自分だけのものにしたいサラ。

まずはこの二人がどのような手段で相手を蹴落とそうとしていたかをまとめていきます。

アビゲイルの攻撃

まずはエマ・ストーン演じるアビゲイルの攻撃。アビゲイルはかなり性悪というか、勝つためなら手段を選ばないというタイプで、かなり強烈な攻撃を仕掛けていきます

まず手始めに、女王の関心をサラから自分に向けるため、女王と寝ます。脚のマッサージから始めて徐々に脚の付け根に手を伸ばしていき・・・。このことによって女王はアビゲイルを気に入ります。なぜならサラは舌でしてくれないけどアビゲイルはしてくれるから!

こうして女王の関心を自分に向けたアビゲイルは、さらに女王に近づくために「サラに侍女の立場を解雇されてしまう!」と女王に訴え、女王の元においてもらうことに成功。

しかしやはりサラが邪魔だ。そう考えたアビゲイルは、紅茶に毒を入れてサラを殺そうとします。結局サラは死にませんでしたが、サラがいない間に貴族マシャムと結婚して、見事高い地位を取り戻すことに成功します。

身分を取り戻し、サラを宮殿から追い出すことに成功しますが、女王はまだサラへの思いを完全には断ち切れていない。これを完全に消すために、女王への手紙をチェックし、サラから来たものは事前に取り除いて手紙を燃やしてしまいます。

これでもまだ足りない!まだ女王の気持ちはサラに向いている!
アビゲイル最後の攻撃は、サラを国から追い出すこと。「サラが資金を横領していた」と女王に訴え、アビゲイル、ターンエンド。

サラの攻撃

実はサラはアビゲイルの攻撃に対抗しているだけで、アビゲイルほどひどいことはしていません。むしろまっとうなことしかしていない気が・・・。

一応先に攻撃を仕掛けたのはサラということになるのでしょうか。弾を込めていない空砲をアビゲイルに向けて撃ってビビらせます。この件のせいでアビゲイルの被害妄想が助長されたので元凶はサラなのかもしれません。

前述の通りアビゲイルは女王と寝ます。偶然なのか故意になのか(たぶん故意)、アビゲイルはコトが終わったあとの姿をサラに観られてしまいます。これに怒ったサラはアビゲイルを侍女から解雇します。

これ以降のサラの攻撃は女王とアビゲイルを引き離そうとするだけで、アビゲイルほどひどいことは何もしません。

毒を盛られて帰還したサラは、女王からの恋文で脅して、女王にアビゲイルを解雇するように訴えます。これがサラの最後の攻撃。殺されかけたのだから当然ですよね。しかも結局女王からの恋文をばらまいたりせず燃やして証拠隠滅します。サラかっこいい

アビゲイルへの印象の変化

最初は、不遇の人生を送ってきた心優しい女性のように見えるアビゲイルが、最後には超計算高くて目的のためなら手段を選ばない、まったく心優しくなんてない女性になります。「なります」というか、初めからそうだったのかもしれない。

女王のために薬を調合してあげたように見えたけど、実は最初から「女王に優しくして気に入られれば、自分も元の貴族の地位に戻れるかもしれない」と思ってそうしていたのではないか。

自分の不幸な身の上話と、それに負けない強い自分のエピソードをサラに話せば、気に入ってもらえて侍女にしてもらえるかもしれないと思ってその話をしたのではないか。

本当はうさぎなんてどうでもいいけど、女王に気に入られるために関心のあるふりをしたのではないか。

射撃がうまくできなかったか弱い没落貴族の娘はなんだったのか。サラと対決することを選んだときにはサラに血しぶきを浴びさせていたではないか!

エマ・ストーンのイメージとも合わせて、アビゲイルへの印象がどんどん変化していくのもこの映画の面白いところ。本当はまったく変わっていないのに、こちらが勝手にそう思っていただけかもしれないのに。

結局誰が女王陛下のお気に入りなのか

『女王陛下のお気に入り』の原題は『The Favourite』。「favourite(favorite)」は、日本語の「お気に入り」という言葉のイメージよりも強い意味の「お気に入り」で、「一番のお気に入り」とかそういう感じの意味です。

そのfavouriteに「the」がついて「The Favourite」ということで、原題を直訳すると「特に一番のお気に入り」とか「大本命」という意味になります

こう考えると、結局誰も「女王陛下のお気に入り」にはなれなかったのではないかというのが個人的な結論です。

女王は自分を精神的にも肉体的にも気持ちよくさせてくれる相手を、自分の道具にできる人間を寵愛していただけで、サラに対してもアビゲイルに対してもそこまでの気持ちは一度たりとも抱いていなかったのではないでしょうか。

女王からの寵愛を勝ち取って身分を取り戻したかのように見えたアビゲイルも、女王の前ではうさぎ以下の存在です。「命令通りに動け」と、叱りつけて終わることからもそれがわかります。

サラ VS アビゲイルの戦いに勝ったのはアビゲイルですが、誰も「The Favourite」にはなれなかったのです

映像と音楽の美しさが素晴らしい

これは私がヨーロッパの建築物とか貴族の服装とかが大好きなので贔屓目で観ているだけかもしれませんが、映像の美しさが素晴らしいです。本当に18世紀頭のヨーロッパを観ているかのよう。

音楽も非常に素晴らしくて、予告編をみてビビッときた人は映画館で観ることをおすすめします。映画館のスクリーンでヨーロッパの美しい映像を見て、壮大な音楽を聴いて、それだけでも満足できる作品です。

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